日本語 English

日本の総合的病害虫管理(IPM)について

日本の総合的病害虫管理(IPM)について

国際的に提唱されている総合的病害虫管理(IPM)ですが、日本では「総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針」として農林水産省より公開されています。
今回は日本の総合的病害虫管理(IPM)について簡単に紹介したいと思います。

【IPMとは】

皆さんは「IPM」という言葉を聞いた事がありますか?
IPMとは、総合的病害虫管理(Integrated Pest Management:IPM)の事であり、病害虫による被害を抑えるための手段を講じ、人の健康へのリスクと環境への負担を軽減する為の概念として国際的に提唱されています。(IPMを「総合防除」と言うことも多いです。)
これまで化学農薬は生産者の労力を減らし、収穫量の上昇をもたらしました。しかし農薬への依存度が高まって過剰に使用されるようになるにつれ、環境や生態系への影響が大きくなっていきました。またこのような状況は、農薬に抵抗性のある害虫や病原菌などの出現を招きやすく、より農薬への依存が高まることにもなります。
これらは最終的には私たちの健康や生活環境に悪影響を及ぼすため、農薬に頼りきりの化学的な防除方法だけではなく、天敵などを利用した生物学的な方法や、粘着版などの物理的な方法などもうまく組み合わせ、バランスよく病害虫対策を行うという考え方が広まってきました。このように現在は様々な国の農業政策の中でIPMが取り入れられていますが、これはSDGsが目指す持続可能な世界を実現するためにも必要なことでしょう。
 日本では、2005年に農林水産省 消費・安全局により、IPM検討会での検討結果を踏まえた「総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針」が取りまとめられました。

【総合的病害虫・雑草管理(IPM)の体系】

総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針では、IPMの基本的な実践方法として以下の体系図が示されています。

この体系図のように、IPMを実践するには“予防的措置”、“判断”、“防除”の3つの取組が基本となっています。

【IPM実践指標】

生産者自身が、IPMに関する取組み度合いを容易に把握できるようにする為、農林水産省から「IPM実践指標モデル」が公開されています。
IPM実践指標モデルでは、IPMを実践するうえで必要な農作業工程と、各工程における具体的な取組内容が示されています。現在公開されている実践指標モデルは、“水稲”、“キャベツ”、“カンキツ”、“りんご”、“なし”、“施設トマト”、“施設いちご”、“大豆”、“さとうきび”、“茶”、“露地きく”ですが、病害虫や雑草の状態は地域によって異なります。
 そのため、IPM実践指標モデルを参考に、都道府県によって地域の実情に応じた作物ごとのIPM実践指標が策定されています。

また、IPM実践指標は、新たな技術や実証データが蓄積される事により、随時見直しを行う必要があります。その際に「新技術の導入に当たっての実証」、「農業者自身で実施可能な調査手法等の導入」、「環境負荷の軽減に向けた農薬使用の推進」などに注意されています。

【IPMの推進】

このようにして策定された地域ごとのIPM実践指標ですが、都道府県の病害虫防除所等だけで多くの生産者に指導する事は困難です。この為、病害虫防除担当者、普及指導員、試験研究者、生産者団体などが一体となってIPMの推進に取組む必要があると言われています。

ニッポンジーングループでは、土壌や植物に病原菌などが潜んでいるかを簡単に検査できるキットやサービスを取り揃えています。土壌検査で病原菌が見つかった場合、それに応じた措置を取ることが可能になります。また、植物体を検査すれば、何の病気かを簡単に診断する事ができます。
適正な農薬等資材の使用量が見極められれば、低環境負荷にもつながりますし、経費の削減にもなりますので、ぜひIPMの実践にお役立てください。


参考資料
農林水産省Webサイト 総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_ipm/