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サツマイモ基腐病の拡大について(2020年12月時点)

サツマイモ基腐病の拡大について(2020年12月時点)

サツマイモ基腐病は2018年末に国内で初めて発生が報告されて以降、サツマイモ(かんしょ)の生産に大きな打撃を与えています。2020年になって被害は拡大しており、10月には新たに福岡県と熊本県、11月には長崎県、12月には高知県、静岡県と発生報告が相次ぎました。
サツマイモ基腐病とはどのような病気なのか、また私たちの生活にどのような影響があるのかを考えてみたいと思います。

1:サツマイモ基腐病とは

サツマイモ基腐病は2018年11月に日本で初めて発生が報告された病害で、糸状菌(Plenodomus destruens)によって引き起こされます。この病気が発症すると、葉が変色して生育不良になり、根元が黒変して腐敗します。また地下に生育するサツマイモも成り口(蔓とつながっている方)から変色し、カビの臭いがします。この腐敗したサツマイモの表面を拡大して見ると、糸状菌が作り出す黒い粒々が観察されます。

サツマイモ基腐病は約100年前にアメリカで発見され、南北アメリカやアフリカ、ニュージーランドなどで被害が知られていましたが、この10年の間に、アジア地域でも被害が起こっていました。そして2018年11月、沖縄県で初めて発生が報告されました。続けて12月に鹿児島県、翌2019年1月には宮崎県で相次いで報告されました。2020年になり、10月には福岡県と熊本県、11月には長崎県で発生の報告があり、12月には高知県、静岡県で報告されました。
当初は九州・沖縄地方が中心でしたが、四国地方や関東地方でも初めて発見され、本病害は深刻な広がりを見せています。

また、宮崎県と鹿児島県では、2020年にも病気の蔓延が確認され、5月には宮崎県、6月には鹿児島県で注意報が出されています(再発の場合は特殊報ではなく、注意報になります)。特殊報や注意報については、後日植物病の防疫に関する記事で少し詳しくご説明したいと思いますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

サツマイモ基腐病は排水が良くない場所で発病しやすいと言われています。発病株に形成された胞子が、降雨による飛散や滞水によって周辺株に広がって感染するため、圃場の排水対策が大切となります。2020年に感染が拡大した原因の一つとして、梅雨が記録的な雨量であり、高温多湿の条件となったことが一因ではないかとされています。
サツマイモ基腐病に感染した個体を種芋にしてしまうと発病するのはもちろん、収穫後に感染個体の残渣が土壌中に残っていると越冬し、健全な種芋を作付けしても土壌から感染してしまうと考えられています。
サツマイモ基腐病の病気が進行したものに関しては目で見て明らかな病徴が確認できるのですが、初期段階のものは見た目だけでは判断しにくいことがあります。一見健全な個体に見えても、病原菌が潜んでいればそれが圃場に広がってしまうことになるため、早期発見、早期除去が大切になります。

このような病気の広がりを受け、国も支援策を講じています。2018年末に初めて確認され、翌年の2019年に被害が拡大したことより、2020年産のサツマイモへの影響を最小限にするための支援が行われました。しかし2020年もさらに被害が拡大していることを踏まえ、2021年産のサツマイモのための支援が拡充されます。以下は公表されている支援策の一部(出典:農林水産省Webサイト)になります。

・圃場残渣の処理費への支援
・ウイルスフリー苗、種芋の調達支援
・苗、苗床消毒用殺菌剤等への支援
・予防、治療薬剤への支援
・広範囲に被害が発生した地域(被害発生圃場の割合が全体の5割以上の県または市町村)でのサツマイモの継続栽培支援 など

*サツマイモは甘味資源作物として、サトウキビなどと併せて支援が行われています。
*サツマイモはかんしょ(甘藷)とも言われ、同じものを指します。

2:私たちの生活への影響

毎年秋から冬になると焼き芋のシーズンになり、寒い時期には甘くてほくほくのサツマイモに舌鼓を打つファンも多くいらっしゃるのではないかと思います。また茨城県では干し芋が有名ですし、お土産などでサツマイモのスイーツを送ったりいただいたりした方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

サツマイモの作付面積が大きいのは、以下の県です。

サツマイモの用途としては主に青果用(生鮮食品として流通)、焼酎用、でん粉原料用、加工食品用として使用されます。

一口にサツマイモといっても各地で様々な品種が生産され、それぞれ特徴があります。
例えば焼き芋に適した甘みの強いサツマイモの代表的な品種に、九州の種子島で生産が盛んな「安納(あんのう)芋」がありますが、2020年はこの病気の影響で不作となりました。
またお酒が好きな方の中には、芋焼酎が好きな方もいらっしゃると思いますが、この原料となるサツマイモも被害を受けています。焼酎に用いられる品種として代表的なものに黄金千貫(コガネセンガン)がありますが、これも病気が蔓延した地域では収穫量が落ちました。
他にもサツマイモはでん粉原料として使用されています。でん粉が私たちの生活にどう使われているかピンと来ないかもしれませんが、でん粉の構成成分であるブドウ糖を甘みの強い果糖に変換した果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)などに加工され、清涼飲料水やお菓子などに使用されています。
このように、サツマイモは私たちの生活にも関わっていますし、サツマイモの生産者も多くいらっしゃいます。冬を過ぎると、また作付けが始まります。植物病は天候にも左右されるため、次の年がどうなるかを予想することは難しいですが、サツマイモ関連食品のファンとしてはサツマイモ基腐病が拡大しないことを強く願っております。

3:私たちニッポンジーングループができること

2019年3月、東京大学植物病院®はサツマイモ基腐病の検出キットの開発に成功し、ニッポンジーン マテリアルより販売を開始しました。
2020年には販売を開始した前年よりも多くお問い合わせをいただいていることからも、本病害の深刻さを感じております。
私たちはサツマイモ基腐病の遺伝子診断キットをご提供することで、病気の個体の判別を容易にし、病害拡大の防止、地域のブランドを守ることに貢献して参りたいと思います。

 

参考資料:
1. 月報 砂糖類・でん粉情報 2019年10月号
「サツマイモに甚大な被害を与える侵入病害「基腐病」の超高感度・簡易・迅速診断」
東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教 前島健作、教授 山次康幸
独立行政法人農畜産業振興機構WebサイトURL:https://www.alic.go.jp/content/001169644.pdf
2. 農林水産省Webサイト 病害虫防除に関する情報、「発生予察事業とは」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/
3. 農林水産省Webサイト 令和2年度砂糖・でん粉対策関係事業 令和3年産に対して行う支援策
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/reiwagannenn/r2.html
4. 農林水産省Webサイト 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/